初心者向け(じゃないかもしれない)模型撮影講座
カメラセッティング編 その2


(3)露出 −絞り−


さて、シャッタースピードの他に露出を決めるもう一つのパラメータ、「絞り」です。F4とかF11とかの数値で表示されます。シャッタースピードが光を取り込む時間を決めるのに対し、絞りとは、一度に取り込む光の量を決定するものです。

実はこの絞り機能、人間の目にもあります。明るいところだと瞳孔が小さくなって、暗いところでは瞳孔が開きますよね?カメラの絞りもコレと全く同じ。レンズの内側に絞り羽というものがあって、絞りの数値(F値)をを変えるとこの羽が開いたり閉じたりして光の入る量を調節します。

絞りの数値はカメラやレンズによって違います。普通のデジカメだと開放絞り(絞りを使わず、レンズの明るさを全部使う状態)はF2前後、最も絞り込んだ状態(絞り羽を最大につかって、一番光を入りにくくした状態)でF8〜11程度。明るい写真を撮りたければ絞りを開ける(F値を小さくする)し、暗めにしたければ絞り込む(F値を大きくする)ことになります。

で、この絞りですが、「被写界深度」と密接な関係にあります。「被写界深度」とは、ぶっちゃけ、ピントの合う範囲のことです。
被写界深度が深ければ、写真全体、手前から奥まで、ピントがあった画になります。逆に浅ければ、ごく一部だけにピントが来てる写真になります。絞りを開けるほど被写界深度は浅く、絞り込むほど被写界深度は深くなります。

商品のカタログなどでよく見ますが、写ってるもの全体にピントがばっちり合っている写真ってありますよね?これは、めいっぱい絞り込んで被写界深度を深くして撮っているんです。また逆に、人物のポートレートとかで、顔だけにピントがあってて他の部分はボヤッとしてる、ソフトフォーカスっぽい写真もあります。コレは絞り開放で撮っているわけです。模型の場合も全く同じ。全体像を克明に描写したければ絞る、ピントの合っている一部分を強調し、雰囲気のある写真が撮りたいなら開ける、撮りたい雰囲気によって絞りの数値を変えるのは、基本であり、奥義です。

F2.4
F3.2

F5.0
F8.0

イマイチわかりにくいかもですが、上の4枚は絞りを変えて撮りました。全てピントは顔にあわせています。後ろ髪のボケ具合を比べてみてください。特にF2.4とF8.0とを比べると、はっきり違いがわかると思います。

尚、私は個人的に絞り開放の雰囲気が好きですが、デジカメのF2程度ではまだまだ被写界深度が深すぎると感じます。デジカメは、CCD&レンズの関係でフィルムよりも被写界深度が浅くならないという特徴がありますので。ギャラリーのWith Grampusや長谷部彩の1枚目画像などは、レンズの先端にフィルターのようにして取り付けるクローズアップレンズ(マクロレンズ)というものを使用しています。

(2)ピントの項でちょっと書きましたが、被写界深度はF値のほかにも被写体に近づいて撮るほど浅くなります。マクロモードで、クローズアップレンズを装着して被写体により近づけば、よりボケ味を強くした画が撮れます。

更に、焦点距離(ズーム)によっても変化します。望遠側で撮るほど浅く、広角側だと深くなります。「絞り」「被写体との距離」「焦点距離」これらの要素でボケ具合が変化することを覚えておいてください。


(4)露出 −シャッタースピードと絞りの関係・露出補正−


以上説明した「シャッタースピード」と「絞り」、この両者の数値の組み合わせで「露出」が決まります。この両者の関係は、要するに反比例。よく、水道からバケツに水をためる例に例えられます。

バケツに一杯分の水をためるとき、ガバッと蛇口をひねって大量の水を出したなら、水を出している時間は短いです。蛇口をちょっとだけしか開けなければ、長い時間水を出し続けないといけません。
以上の比喩の、
バケツ一杯分の水=適正量の光(露出)
蛇口=絞り
水を出している時間=シャッタースピード
です。ね、簡単でしょ?

一定の光量下で、全体にピントの合ったパンフォーカス的な写真を撮りたいなら、絞り込みます。その時シャッタースピードは、遅めに設定しないといけません。また、手ブレを防ぐためシャッタースピードを速くしたいなら、絞りは自動的に開放にしないと、適正露出は得られません 。

さて、実はここまで、マニュアル(もしくは絞り優先オートなど)で露出を任意に設定できるカメラの話。普通はオート(プログラム露出)でカメラが全部やってくれます。でも、望むイメージの写真を撮りたいなら、露出の決定はマニュアルでやるべきです。

じゃあ、シャッタースピードと絞りを任意に設定できない、全部オートでやるしかないカメラの場合は?
どうしようもない、と言ってしまえばミもフタもないか・・・

でも、救いはあります。かなり安価なモデルでも、今どきは「シーン別おすすめモード」的な機能がついてる場合が多いです。説明書を読んでみましょう。動きの速い被写体を撮るときはスポーツモード、人物をキレイに撮りたいならポートレートモード、あと、風景モードとか夜景モードとか・・・(名前はメーカーでいろいろです)。
これらの各モード、カメラ内で何をしているかというと、要は、前述のシャッタースピードと絞りの関係を変化させているんです。具体的なF8とか1/60とかの数値は表に出てこないですが。人物撮影モードだと、絞り開放気味でシャッタースピード速め。風景モードだと、絞り込み気味でシャッタースピード遅め。スポーツモードだと絞り開放でシャッタースピード速め、などなど。
模型を撮るからといってスポーツモードにしちゃいけないという決まりはありません。先入観にとらわれず、全ての設定を試してみて、どんな風に撮れるか比べてみてください。

さて、お次は露出補正について。マニュアルで露出を決定する場合は関係ないのですが、カメラ任せで露出を決定する場合の話。特にフルオートカメラをお使いの方、ここから重要です。露出補正は(オートで撮る場合)最も使用頻度の高い機能といって良いです。

今まで上記で書いたことは、全て「一定の光量下で」という注釈が入っています。つまり、撮影する場所の明るさによって、露出は変えないといけないのですが、それはカメラ内の露出計が光量を計って、自動でやってくれます。でも、この露出計、自動だけあって結構ヘボです。模型の撮影に関しては、まず信用しない方が良いでしょう。

というのも、この露出決定の仕方なのですが、カメラの露出計&プログラムは18%グレーという色(明るさ)を基準にしています。大雑把な話、カメラは「あらゆるものをグレーに」撮ろうとします。白いものも、黒いものも全部グレーに。白いものを白く撮りたければ、露出補正をかけてやらないといけないのです。まず大概のモデルで、露出補正の機能はあるはずです。説明書を読んで確認してみましょう。

-2.0
-1.0

露出補正無し

+1.0
+2.0

上の補正無しの写真を見てもらうとはっきりわかると思います。バックの真っ白い紙が、思いっきりグレーに描写されています。このように、白を白く写したいときはプラス側に補正してやります。今回の状況だと+1と+2の中間、+1.3もしくは+1.7が補正量としては適当のようですね。一方、黒を黒く写したい場合は、マイナス側に補正することになります。

この補正の度合いは、カメラの種類・被写体の色・照明の状況で様々。試し撮りをしてみて判断しましょう。