初心者向け(じゃないかもしれない)模型撮影講座
ライティング編 その3


今回は、前回説明したディフューザー・レフ板・サブライトの組み合わせ方。ただこの「組み合わせ方」、時と場合によりけりですし、セオリーを言葉で説明するのもツライので、今回は実戦形式で。

で、今回の被写体は「カメラ」。これをちょっとマジメに、気合い入れて撮ってみます。被写体にカメラを選択した理由は、模型よりかたちが単純・直線的で説明しやすく、でも異素材(プラスチック・ガラス)を組み合わせた構成体なので、ライティングのバリエーションの違いがよく出るから。「見せ場」が明確である、ということもあります。友人から借りたニコンのCoolpix880を撮りました。

今回は撮影風景と、その成果のカットを並べてみました。成果カット(右写真)の方はクリックすると600×450の画像も見れます。尚、撮影風景の方は光量を確保するため、室内蛍光灯をつけた状態で撮影しました。バック紙にZライトの影が落ちているのはそのためです。実際の撮影の際は室内蛍光灯は消しています。


(1)真上から一灯


まず白のバック紙を敷き、被写体をセット。その真上からZライトを当てました。これがメインライトになります。位置と距離は写真を見てもらえばわかるでしょう。

今回、なぜメインライトが真上なのか?というと、人間の目には上からの光が一番自然に見えるからです。人間は必ず何処かで太陽光を意識しているわけですね。「凸部分の上が明るく、下が影になる」のが最も違和感がないです。この辺、光の方向について詳しくは次回。

この段階では、カメラの下に出来る影の具合に気をつけるだけ。「普通に」影になっていればOKでしょう。ちなみにこの段階で、白のバック紙を使ってホワイトバランスだけはユーザーセットで決めてしましました。あとの露出等は適当です。この段階で決めても意味ありませんから。


(2)ディフューザーを追加


(1)の段階では明暗差がありすぎますのでメインライトにトレペを掛けました。被写体下の影がぼんやりして柔らかくなりました。

前回「ライティング編 その2」で説明したように、トレペと光源の位置で拡散具合は変化します。今回は「ある程度は拡散させる、でも硬い光の感じは残す」方向でディフューズ。カメラが好きな拡散光にはするけれど、でも被写体が「メカ」なので、エッジを立て、ある程度シャープな印象の写真にするためです。


(3)前面にレフ板を追加


(2)の段階では、誰がどう見ても、明らかに正面が暗いです。これを起こすために正面左側に白レフを設置。正面に光を回してやりました。

いきなり良い感じになりましたね。柔らかい反射光が当たってソフトな印象の画になりました。これでやや暗めの右側面を何とかしてやれば「使える写真」になってしまいそうです。被写体がフィギュアだったらこれでもう充分かもしれません。ちなみに「フォトキューブ」使用するとこんな感じの写真が撮れます。一応ご参考までに。

でも、この写真、今回私が目指す方向性とは違います。もっとシャープな感じにしたいです。ちょっとイメージを変えるため(&照明の種類による違いを見せるため)レフ板は外します。


(4)サブライト(エフェクトライト)の追加


(3)からレフ板を外し、代わりに2灯目のライトを当てました。ぜんぜん印象が違うのがわかると思います。

まず、レンズ・ファインダー部分。内側まで光が入り、レンズに光が反射しました。これで被写体が「光学機器」だということが明確になったと思います。レフ板ではなく敢えてライトを使うのはこれを見せたいため。レンズにキャッチライト(?)を入れるという意味で、この2灯目のライトは「サブライト」であると同時に「エフェクトライト(演出用のライト)」でもあります。また、各面取りに明暗差が出来て、カチッとした感じになりました。シャッターボタン付近を見てもらうとはっきりわかるかな?

ただし、正面から直接光が来てますからちょっとエゲツなさすぎます。例えばグリップ部の盛り上がりなどは明確になりましたが、少し明確になり過ぎです。これ以降は「エグさ」を減らす方向で進めます。


(5)サブライトにディフューザーを追加


上記の「エグさ」解消のため、まずサブライトにトレペを掛けます。これも光の具合を見ながら、位置を決めます。レンズの反射がぼやけて良い感じになるくらい。でも全体的には拡散させ過ぎず、あくまでシャープさは残すくらいに。


(6)両サイドにレフ板を設置


(5)の段階でディフューズし過ぎると、せっかくつくったレンズ部分の反射が無くなってしまいます。それを避けつつ、全体に平均的に光をまわして「エグさ」を消すために、両サイドにレフ板。

このときの注意としては「光をまわしすぎないこと」。(3)と比べて、せっかくシャープな画づくりを目指しているのですから。例として、右側のレフ板、かなり前にせり出す位置にセットしてます。カメラ右側面の暗部を「起こすけど、起こしすぎない」かつ「正面とのつながりのアールに光を入れて曲がり具合を目立たせる」感じで。左側レフ板についても、せっかくのシャッターボタン付近の面取りや、グリップのエッジの光を消さない程度に。

この段階でのレフ板の位置・角度は本当に微妙です。何回か試し撮りをし、頭の中のイメージと照合しながら、試行錯誤しましょう。


(7)黒ケントの追加・最終調整


(6)の段階で9割がたOKですが、どうもいまいち「締まり」がない感じ。最後の演出として、グリップ部「Nikon」のロゴを目立たせます。

左側レフ板に、10cmくらいに切った黒ケントを貼り、ロゴ部分の光の反射を操作します。黒ケントの大きさ、位置を微調整し、ロゴの部分にはレフ板の反射光が当たらないようにしました。

また、最終チェックとして全ての照明・ディフューザー・レフ板の位置を1cm単位で微調整し、被写体・バック紙ともに変な陰影が出来ないように直しをかけました。で、結果、右写真。ほぼ満足できる光がつくれました。

(6)の段階までは試し撮りだったので、露出はプログラムオートで適当に露出補正して撮ってましたが、最終的にこの段階でマニュアルに切り替え、F8まで絞り込み、シャッタースピードを何段階か変えてブラケット撮影。ピントもきちんと合わせました。画像補正なしでこのぐらいに撮れていれば、コマーシャルフォトとして使えるんじゃないでしょうか。少なくとも、素人が自宅のコタツの上で蛍光灯使って撮ったようには見えないでしょ?

特に(3)の写真と比較してみてください。(3)は「実物を、あるがままに見せる」って写真ですが、(7)の最終写真は「より良く、魅力的に見せる」 って感じでしょうか。どちらが良いとは言いません。が、「自分の望むイメージの写真」を撮るための試行錯誤のしかた、少しはわかってもらえたでしょうか?


以上がレフ板やサブライトを組み合わせた「実際の撮影」の流れです。今回はカメラを撮りましたが、被写体が模型でも大筋は同じです。
こんな風に私は撮ってますが、これ、俗に「足し算のライティング」と言われます。メインライトを決めて、それで足りない部分にひとつずつ、光を足してやるかたちです。理論的で、理解しやすいんじゃないでしょうか。まずは「足し算のライティング」が出来るようになりましょう。

でも、本当に上手いプロカメラマンは「引き算のライティング」をします。照明を足していくと、どうしても「普通じゃない」感じがする写真になりがちです。演出過多というか。要らない光は使わず、最低限のライティングでポイントを定めて被写体の魅力を十分出してしまう、これが本当に「上手い人」です。これは私の今後の課題でもありますが、「より良く魅力的に」と「自然に」の両立ですね。もちろんメチャクチャ高度なレベルの話です。私はまだまだそこまで行けませんけど。

う〜ん、ここまで書いて思ったんですが、今回は完全に「初心者向け」逸脱してますね・・・。「プロカメラマン養成講座」じゃないんですから・・・。皆さんここまでやる必要はないと思います。上記だと(3)くらいで十分キレイに撮れますから・・・。まぁ、興味がある人の「話のタネ」に。

次回は「光の方向」について。